【内容面】映画『Ne Zha』(哪吒;ナタ)の内容を分析、中国でマスを攻める方法を考える。

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アニメ

前回の記事で制作面を頑張ったのは分かったよ!でも、単に3Dかっけ~!だけじゃあディズニーなどの欧米アニメには負けていると思います。こう言うのもなんですが、やっぱり彼らの下請けをして培ってきた技術があっても、映画の『核』は、やはり何を観客に伝えたいかでしょう。

本作の内容面に関しては、以下に小分けしてお伝え致します:

①物語の土台
②今の中国人に対してのメッセージ
③表現方法

①物語の土台

“哪吒(ナタ)”というキャラ、日本の皆さんにとってはあまり馴染みはないのかもしれません。私が知っている限りだと、「最遊記」には悟空の天界にいた時の友達として出てきていた様に記憶しています。あとFGOですかね。

このキャラは中国では古典の「封神演義」、「西遊記」などに出てくるキャラクターです。その後1979年に中国で上映された「哪吒闹海」というナタを主人公にした映画は、中国の大型カラースクリーンで上映された初めての劇場アニメともなります。当時この映画のストーリーの土台は、長らく中国で語り継がれる神話のエピソードだったのです。日本でいう、アマテラスの「天岩戸の神話」の様な感じです。つまりは、少なくとも”哪吒”は誰でも名前は知っていて、大体の大雑把なストーリーは知っている、といった広い認知度がある物語が土台となっています。

②今の中国人に対してのメッセージ

なんだ、またリメイクか、と思った方は多いかと思いますが、監督が気づいたのは、この79年版のナタの映画、古典の「封神演義」に登場するナタともイメージがかけ離れていたる事です。古典を読み返すと、実はツッコミ所も多い、そして79年版は“当時の世代の精神が反映されている”つまり、“善人は善人、悪者は悪者”という白黒はっきりさせたコンセプトになっているのです。それを見て監督はホッとしたと言います。“なんだ、大きく変えてもいいんだ”。

そこから、ナタをいうキャラを、現代の中国の時代的な精神特徴に結びつけています。

「我命由我不由天」(我が運命は我がもので有り、天が決めるものでは無い)

映画「哪吒」内のセリフ

これが、この作品のメインコンセプトです。観客へのメッセージは「個々の夢を追う過程では、挫折も多いし周囲からの反対、偏見は有るが、ナタを見て固有観念を打ち破り、自分の運命を自分の手でこじ開ける程の勇気と励ましを与えたい。」そういった思いでナタを作っていたと監督は話します。

実はこのメインコンセプトの他に、親子の関係や、79年版とは真逆で“善の中に悪有り、悪の中に善有り、問題は君がどう接するかで有り、愛と包容で、悪人も善人になるよ”という事も伝えています。

③表現方法

”伝えたい事が多すぎる”、そう評価する評論家が結構います。でも普遍性の高いメッセージを、本当にドストレートに全力で読者にぶつけたのが、本作の大ヒットに大きく結びついたと思っています。

私も劇場で見ましたが、見終わった感想が、監督が伝えたかったメッセージが、100%中100%で視聴者には届くだろうな、と思った事です。表現が、全編を通してものすごくストレートなのです。小学校の子供には、このメッセージがドストレートに響いて、子供を連れて一緒に見ていた若いお母さんは、あのメッセージに笑い涙を流す…そういった形で、包み隠さずに表現したい事をテンポよく、大画面で大迫力で伝える。その分かりやすさこそ、中国のマス市場を狙う事で一番有効な方法だと、自分は感じたのです。

『哪吒』宣伝用素材にも劇中のセリフを推している

良く、”ターゲットを絞り込む”、”多くの人に伝えたいと思うと、誰にも伝わらない”などの話は、それはもう基礎の様に語られたりします。私も広告代理店にいたので、そんな感じの資料作りや提案をしてきました。

ただ、エンタメ業界に入って、しみじみ考え直した事が、“マスをまだ狙える時代にはマスを全力投球で狙っていこうよ。”だったりします。まあ、最初から諦める事はないですよね。

以下、映画のクライマックスでナタが叫んだセリフを厳選しました。そのストレートな叫びが刺さった観客が多かったのでしょう。

翻訳は自己翻訳なので、ニュアンスだけ伝わればと思ってます。

“去你个鸟命!我命由我,不由天!是魔是仙,我自己决定!”

—-”運命なんてクソくらえだ!俺の運命は俺が決める、天じゃない!自分が魔か仙かは自分が決める!”

*天とは、人の上にある存在。

“别人的看法都是狗屁,你是谁只有你自己说了才算,这是爹教我的道理”

—-“他人の見方なんて知ったこっちゃない、お前が誰かはお前自身が決めろ、これは親父が教えてくれた道理だ!”

“若命运不公,就和它斗到底”

—-“運命が不公平ってんなら、徹底的に争ってやる!”

どうでしょうか?誰かに言ってもらいたい、ヒーロー感のある熱血セリフであると思います。

正直、映画を見ていてメッセージの押し売り感覚はちょっと有りました。でも、ギャグを散りばめて面白おかしくエンタメ要素もちゃんと有ったりしたので、結果単純にコメディとして見てもクスッと笑える作品になったのでしょう。

以上①と②は、より中国での本作に対する評論ではまあまあ主流の考えとなり、③は私自身の考えを付け足しました。

でも、良い制作と内容の他に、成功に一役買ったのがやはり宣伝&配給ですよね。次のブログでは、その辺について少しお話しをさせて頂きます。

ではまた~

前の記事:

【制作面】中国アニメ制作業界のほぼ半分を巻き込んだ映画『Ne Zha(哪吒)』

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